
第6回 公開医療講座Q&A集
「石綿(アスベスト)による健康障害について」 高橋講師 Q&A集
胸膜プラークについて
Q | 胸膜プラークがある人の症状(せき、胸痛など)はありますか? |
A | 胸膜プラークがある人は、一般的には特に症状がありません。プラークによる肺機能の低下は、無いか、あっても軽度といわれています。ただし、石灰化プラークがある場合にはその程度に応じて呼吸機能障害が進行するといわれています。 |
Q | 石綿による胸膜プラークは両肺に見られると聞きましたが、片肺だけということはないのですか? |
A | 原則として非対称性に両側の胸膜に認められますが、癒着を伴う先行性病変があるとき等には一側性のこともあります。 |
Q | 「プラークの石灰化」とはどのような状態のことを言うのですか?結核の治った後に見られるもの(結核性胸膜肥厚)との違いも教えて下さい。 |
A | 「石灰化」とは骨以外の軟部組織にカルシウムが沈着することです。結核性胸膜肥厚の場合は片側性で比較的広範な肥厚であり、石灰化が臓側胸膜優位に生じるのですが、胸膜プラークの石灰化は(全層にわたって生じる症例もありますが)部分的に生じたり、壁側胸膜側に石灰化を認めたりする場合が多いことが重要な鑑別点といわれています。 |
Q | 現在、胸膜プラークがありますが特に他の肺の病気はなく、今後も現在の体調を保持したいと思っています。日常の食事や生活態度等の注意点を教えてください。 |
A | 現在のわが国において、胸膜プラークは石綿ばく露によってのみ発生すると考えられています。胸膜プラークのある人はない人に比べて中皮腫や肺癌が多いので、職業ばく露が認められた方は年2回の検診を無料で行う健康管理手帳制度があります。 ばく露歴がはっきりしない方や環境ばく露で健康管理手帳が交付されない方も年2回の検診をお勧めします。なお、日常の食事や生活態度等注意すべきことはとくにありませんが、過食を避け、適度な運動をする、禁煙をする、過労・ストレスを避ける等がよいと思います。 |
Q | 工場周辺に60年間住んでいましたが、30年前に肋膜炎と医者から言われて、1年間薬を服用しました。その後別の医療機関で、胸膜プラークと診断されました。薬の害は大丈夫でしょうか? |
A | おそらく結核性胸膜炎としての治療をされたのだと思います。胸水がたまっていたのであれば、本当に結核性胸膜炎であった可能性があります。前述したように、結核性胸膜肥厚は胸膜プラークとの鑑別が問題になります。 診断の是非は別として、抗結核薬を1年間服用されたとしても副作用が30年後の今日まで続いている可能性は低いと思います。 |
悪性胸膜中皮腫について
Q | 「中皮」はどこの部分ですか?胸部をミカンに例え、厚皮⇒肋骨胸部、小袋⇒肺とするならば何に該当するでしょうか? |
A | 中皮腫は胸腔、心嚢、腹腔、精巣鞘膜腔などの閉鎖された体腔表面を覆う中皮細胞から発生します。ミカンを使って説明するのは難しいのですが、厚皮があり、小袋があるとして、厚皮が肋骨を包む胸部、小袋を肺とすれば、厚皮の内側にある肋骨の内面を覆う、もう一枚の膜に中皮を例えることができます。実際のミカンには存在しない膜です。 |
Q | 中皮腫には、表皮型、肉腫型、その他どんな型がありますか? |
A | 中皮腫には、表皮型、肉腫型のほか、線維形成型、二相型があります。本邦の報告では表皮型が60.2%、肉腫型が8.5%、二相型が31.3% とされています。 線維形成型は肉腫型の特殊型と位置づけられ、腫瘍の50%以上が密な膠原線維組織からなり、腫瘍細胞の細胞密度が低いものですが稀です。 また、二相型は、上皮型、肉腫型とみなしうる成分がそれぞれ10%以上含まれる例をいいます。中皮腫の特殊型というのは他にもありますが稀です。 |
Q | セカンドオピニオンを受け入れてもらえますか? |
A | 中皮腫に関するセカンドオピニオンも当センター呼吸器内科でお受けします。詳細はセカンドオピニオンのご案内をご覧になるか、地域連携室(045-701-9581)までお問い合わせください。 |
Q | 放射線で中皮腫は治療できますか? |
A | 放射線を抗がん剤と一緒に併用することはあっても、放射線単独で治療することはないと思います。ただし、痛みがひどいときに局所的に放射線を当てることはあります。 |
Q | 検査で中皮腫と診断された場合の一般的な治療方法等について教えてください。 |
A | 中皮種に対しては、一般的には早期なら胸膜肺全摘術という手術を、進行しているなら抗がん剤治療を主体にして、ときに放射線治療を行います。 |
その他のアスベスト関連疾患について
Q | 検査で石綿肺と診断された場合の治療又は改善方法を教えてください。 |
A | 石綿肺自体の治療は難しいですが、肺機能障害の程度をよく評価したうえで、必要ならばQOL向上のため在宅酸素療法を導入することもあります。 |
Q | 肺がんがアスベスト原因であるか否かは診断で判明しますか?また、肺がんと診断するときにアスベストが原因か否かのチェックは必ずするのですか? |
A | 原発性肺がんの患者さんがエックス線写真の像が1型以上である場合、業務上と認定されます。また胸膜プラーク若しくは石綿小体または石綿線維が認められ、 10年以上の曝露歴があれば業務上と認定されます。10年未満であっても石綿小体または石綿線維が一定量以上であれば業務上と認定されます。 もしアスベストばく露歴があるならば(またはご希望があれば)、気管支鏡検査のときにアスベスト小体の有無を確認します。肺がんで亡くなられた方でも手術標本が残っているのなら、あるいは病理解剖がされた場合には、アスベスト小体を数えることができる場合があります。 |
補償、健康管理手帳等について
Q | アスベスト外来の専門医療機関(神奈川県)を具体的に教えて下さい。 |
A | アスベストに係る呼吸器疾患等に関して診察を行っている神奈川県内病院については神奈川県のHPをご参照ください。 また、健康管理手帳(石綿)を交付された方を対象とした健診を実施する県内の指定医療機関は次の7機関です。
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Q | 健康管理手帳とは何でしょうか?また交付手続はどこで行えばよいのでしょうか? |
A | 過去に石綿を取り扱う作業に従事し、離職の際または離職後の健康診断で、一定の所見(両肺野に石綿による不整形陰影があり、または石綿による胸膜肥厚があること。)が認められる場合には、住所地の(離職の際は事業所の)都道府県労働局あてに健康診断結果・レントゲンフィルム・事業者による従事期間証明を添えて申請することにより、健康管理手帳(石綿)が交付されます。 交付されると、健康診断を指定の医療機関(上記)で無料で年に2回受けることができるようになります。 なお、この健康管理手帳の申請は、所属していた事業所が倒産等により現在存在していなくても申請することができます。 申請方法などの詳細についてはお近くの都道府県労働局、労働基準監督署にお問い合わせ下さい。 |