感動看護

 患者さんやご家族、医療者や病院事務みんなで成し遂げたことが、日本看護協会「感動看護」エピソードに入選し、「いのち輝くいい話」という看護エピソード集に収録され、出版されました。

花嫁が病院にやってきた 看護師 小西 敦子

感動看護イメージ1 それは、小雨降る5月の吉日。小高い丘の上にある病院の一室に人工呼吸器をつけた男性患者と大勢の看護師がいた。皆、ベッドテーブル上のパソコン画面に見入っている。そこには生中継で結婚披露宴の様子が映し出されていた。画面いっぱいに笑顔の花嫁が映り、「お父さん!」と呼びかけると病室内に「おー!」と歓声が響いた。

 有志の患者さんが作る「癌友の会」で「会長」と呼ばれ慕われている人がこの花嫁の父である。他の患者さんを励まし続けていた彼が今、ベッドから起き上がれなくなっていた。一人娘の結婚式に出席したい、そのために生きていたいと願う日々が続き、看護スタッフ全員で何とか式に参加できないかと考えたが、病魔は容赦なく花嫁の父を蝕んでいた。病状の進行が速く式への参加は断念せざるを得なかったが、終末期にある患者の思いを叶えたい、思いに添いたいと様々な計画を立て皆で共有しつつ、花嫁の父には秘密裏に進められた。
 それは親族と病院の協力で院内LANを使い式場と病室の二元中継と、挙式後の花嫁の来院の計画である。

感動看護イメージ2 いよいよ当日、父親の姿も式場に映し出され、病室で花嫁の姿も見られて無事披露宴終了。余韻に浸る父親に、着替えてみないかと隠していたタキシードを勧めた。驚き照れながらも「まるで花嫁の父だ!嬉しいねえ」と素直に喜んでくれた。そして合図とともに病室のドアを開けると、そこには式場からドレスのまま駆けつけた花嫁が花束を持って立っていた。「お父さん!」「オ、何だ!おまえ、どうしてここにいる!あれっ!?」そして見つめ合い抱き合う。
 涙する父と娘の姿に、誰からともなく拍手が起こり皆もらい泣きした。看護師達が協力して行った病室の飾りつけや花束作り、タキシードや花嫁のこと、そして院内LANの準備や打ち合わせ等様々なことがあった。
 患者家族・医師・看護師・病院事務職員が協力して成し遂げたこの事に、誰もが行って良かったと思えた瞬間だった。