診療科のご案内 -心臓血管外科-

心臓血管外科のちょっといい話

手術室の長~い1日:あきらめないこの命

平成22年8月

 夕方の16時過ぎのこと。突然手術室のナースステーションに、看護師が駆け込んできた。「上行解離です。縫った針穴から解離を起しているみたいです。」「今晩帰れそうにありません!」それだけ言うと、ダッシュでまた心臓外科手術の行われている手術室に戻っていった。ナースステーションにいた看護師は、しばらくぽかんと口を開けてその看護師の後ろ姿を見ていた--。

 --心臓血管外科はこの4月に3人のメンバーが一新した。今で言う「イケメン」3人であった。
 3人が並んで渡り廊下を歩いていると、そこだけが大学病院に見えちゃう!!と噂になっていた。
 しかし、私たち手術室看護師は、「イケメン」3人組?なんか知らないけど、腕がしっかりしていなくちゃだめよ。手術室の中じゃ、マスクにルーペをつければ誰も彼もいっしょだからね!と3人組を迎えた。

 およそ3ヶ月が経ち、麻酔科や臨床工学士、看護師とも溶け込み、チームワークも良好になっていた矢先の出来事だった。朝8時30分に始まった心臓外科手術で、夕方まではほぼ順調に進行していた。僧帽弁形成術も無事に終わり、もうそろそろ手術も終了に近い頃、心臓とつながる大動脈の一部に亀裂が入り、出血が始まったのだ。稀ではあるが予期できない最も起こってほしくない事態となってしまった。再び人工心肺を開始して心臓を停止させ上行大動脈を人工血管で置換したが、非常にもろい大動脈壁のためその後心臓に近い大動脈が破裂した。人工弁付き人工血管の移植手術と冠動脈の移植を同時に行うベントール手術を更に行うこととなった。人工心肺装置を長時間使用したため、血液が固まらないようになり出血がなかなか止まらない。輸血をしながら出血している部位を抑え、圧迫して止血できることをひたすら待つしかない時間が続いた。いったいこの手術はどうなっちゃうのかしら、明日の手術はどうすればいい?誰が今交代できる?そんなことを誰もが考えていた。とにかく手伝える人を集めなくては・・・。

手術室の長~い1日イメージ1   手術室の長~い1日イメージ2

 と、呼吸器外科の先生が手術の応援に来てくれた。他の病院からも応援の医師が来てくださった。
 看護師も、手術室経験のある病棟の看護師が休日を返上して応援に入ってくれた。技能員さんも遅くまで洗い物をしてくれた。翌日の心臓血管外科の外来は循環器内科が応援に来て診察してくれることになった。「ありがとうみんな!循呼(じゅんこ)ってやるときはみんなやるね。」

 みんなの懸命の努力が、かろうじてこの命を繋ぎ止めていた。くたくたになり、もう何も考えられなくなりそうだった。圧迫止血を始めてから随分と長い時間が経過し、手術室のみんなの口数も減っていた。出血が治まる気配はない・・・。その時、いきなり大きな声で「オレが出血を止めてみせる!」と音楽に合わせてリズムを取りながら手術台に向かってくる医師がいた。一時休憩から戻ってきた心臓血管外科部長だった。重苦しい雰囲気がぱっと明るくなり、消えかかっていた希望の灯がみんなの心に再び灯された。「まだ大丈夫!あきらめないよ。この命!」その場のみんなの思いが再び1つになった。
 --部長が1人で止血に取り組んだ。出血している場所を手で圧迫する。1時間、2時間。ただただ止血するのを待ち続ける。部長は集中を切らさない。みんなが疲労を忘れて、そこにある命が、続くことを願う。家族の気持ちに、思いを馳せる。医療従事者としてだけでなく、ただ一人の人間として--。

手術室の長~い1日イメージ3

 約3時間後、入室から数えると約30時間後、ようやく出血が止まり手術は終了した。結果は、奇跡なんて軽々しく口にはできないが、それぐらい信じがたい、喜ばしいものであった。部長やみんなの熱い思いと頑張りという止血剤が、この病院にはあったのだ。部長の顔はマスクとルーペで覆われていたが、その表情はイケメンだと、誰もが認めた。

 長い長い1日、いや2日間だった。

 手術室は大変だけど、人の命の大切さ、仕事の重さ、感動を与えてくれる。

 手術室の長~い1日イメージ4 手術室の長~い1日イメージ5

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