診療科のご案内 -麻酔科-

麻酔科のご案内

麻酔科の運営方針

 当科のモットーは「安全と快適」です。患者さんが手術や集中治療室(ICU)入室中の期間を安全に、しかも快適に過ごせるように留意しています。
 当院で行われている外科手術は心臓血管外科と肺外科の2科です。月曜から金曜まで手術が組まれており、緊急手術にも対応しています。その他に当科がとくに力を入れているのは以下のようなことです。

  • 術前面談を行い、患者さんからの情報の収集、麻酔および手術前後(周術期)の経過についての説明を十分行う。
  • 経食道エコーの研修を積極的に行い、診断能力を高める。
  • 集中治療管理にも関与し、術前・術中・術後を通した管理を行う。
  • 臨床研究を活発に行い、学会・雑誌に発表し外部からの評価を受ける。
そもそも麻酔科とは?

 皆さんは「麻酔科」というとどういうイメージをお持ちでしょうか? おそらく、明確なイメージが湧いてこない方が大部分ではないでしょうか。
 その理由は色々あると思います。医療を扱ったドラマで主人公になったことがない、手術が終わった患者さんは麻酔の影響で、手術前・手術中のことを覚えていない等々。確かに、手術を中心とした緊急時に患者さんとふれあうことが多く、長く外来でお付き合いするわけではないので無理もありません。そんなわけで、麻酔科の仕事を少しご説明したいと思います。

麻酔科イメージ1 麻酔科イメージ2
麻酔科の仕事

 麻酔科が、手術中の麻酔を担当しているということはよくご存知だと思います。しかし、実は麻酔科の領域は多岐にわたっています。大きく分けると、

  • 手術中の麻酔・全身管理
  • 集中治療室(ICU)での重症患者管理
  • 救急医療での救急医としての活動
  • ペインクリニックでの疼痛治療

に分けられます。
 ここでは、手術中の麻酔・全身管理についてお話したいと思います。

術前回診

 麻酔科医は手術室に患者さんが来てから仕事を始めるのではありません。術前回診といって、手術前に患者さんにお会いしてお話をうかがうことにより情報の収集を行います。今までに経験した病気の事や手術の事、ご家族の手術歴、今現在お持ちの病気の事、アレルギーの有無、服用中のお薬のことなどをお聞きします。

診察

 その後、診察して体調の把握に努めます。一般の診察に加えて、麻酔科医は手術時に重要な点について詳しく診察します。すなわち、人工呼吸に必要な管を入れるために、お口の開き具合や歯の状態を調べます。また、血管に管を入れるために血流の状態を調べます。手術中の体位について無理がないかどうか関節の動き具合を調べたりもします。そういった情報により、麻酔科医は患者さんにとって最適な麻酔法や注意すべき点を知ることができるのです。

手術室では

 さて、手術室に患者さんを迎えて麻酔科医は心電図を着けたり、点滴を確保したりします。患者さんの記憶に残るのはここまでで、全身麻酔の場合、この後患者さんは眠ってしまいます。それから麻酔科医が何をしているのかは、多くの方にとって謎だと思われます。患者さんと一緒に眠ってしまっているわけではありません。
 患者さんが眠ってしまった後、麻酔科医はマスクを患者さんの口にあてて、バッグを押しながら肺に空気を送り込みます。お薬がよく効いてきたら、喉に人工呼吸のための管を入れます。管が入ったら、呼吸音を聞いて問題なく呼吸が出来るかどうか確かめます。その間、麻酔科医の目や耳は患者さんや各種モニターの間を目まぐるしく駆け回ります。その後、人工呼吸器を作動させ、まずは一段落です。それから、追加の静脈ラインを採ったり、必要なモニターを装着したりします。

麻酔科イメージ3 麻酔科イメージ4

 麻酔は、よく飛行機の操縦にたとえられます。それは、パイロットと麻酔科医の思考・動作がとても似ているからです。パイロットが飛行前に機体や計器のチェックをするように、麻酔科医も麻酔回路やモニターの確認を行います。飛行機の操縦で離陸と着陸が難しいように、麻酔でも導入と覚醒時に麻酔科医は最も緊張します。

モニター画面 人工呼吸回路
モニター画面 人工呼吸回路

 執刀される前後は、飛行機ではまだ上昇中です。高度は低く、何か問題があれば墜落の危険が伴います。
 その後手術が順調に進み、血圧や脈拍数が落ち着いてくると、巡航高度に達したことになります。飛行機のコックピットでは、自動操縦がセットされ、キャビンアテンダントさんからパイロットにコーヒーがふるまわれることでしょう。残念ながら手術室ではそんな楽しみはありません。麻酔科医は、忙しく麻酔記録を書き込んだり、手術野を監視したり、患者さんの様子を確認したり、モニター類を目で追ったり、うろうろ、きょろきょろしています。麻酔には自動操縦はありませんので、機体が航路を外れそうになったら、早期に元に戻さなければいけません。つまり、血圧が下がり気味だったら点滴を増やしたり、昇圧剤を使い、逆に高ければ麻酔を深くしたり、降圧剤を打ちます。出血が多ければ輸血の準備をして、尿が少なければ利尿剤をという具合です。
 また、心臓の手術の場合、心臓を一時的に止めるときがあり、心臓と肺の代わりをする人工心肺装置という機器を使用します。担当するのはMEです。外科医と連携を取りながら、処置が終わり、止まっていた心臓が動き出し、人工心肺から離脱するときは繊細な操作が要求されます。麻酔科医が薬を調節しながら、MEが人工心肺のポンプの流量を少しずつ減らしていきます。チームワークが必要とされる場面です。いつもながら、動き出す心臓には感動を覚えます。なにしろ、必ず動き出すことを約束して止めていたのですから!

点滴 麻酔器と麻酔科医
点滴 麻酔器と麻酔科医

手術後

 さて、手術が無事に終われば再び緊張の着陸=覚醒が待っています。患者さんが起きてくると血圧は上がり、脈も速くなってきます。それらをコントロールしながら、安全に喉の管を抜くタイミングを見計らいます。無事に管が抜けても、しばらくは患者さんの様子を観察します。患者さんはこの間徐々に目がさめてきて、会話が出来るようになってきます(でも、後で覚えていることは少ないのです)。飛行機なら、滑走路から誘導路を走っている頃でしょうか。

病棟へ

 やがてバイタルサイン(血圧や脈拍や呼吸)が落ち着き、病棟へ移ることになります。一般病棟へ帰る場合は、手術室の入り口で病棟の看護師さんと主治医に受け渡します。患者さんを見送って、初めてほっとすることになりますが、大きな手術後にICUに入る場合は、そうはいきません。
 大手術の後は、患者さんの状態は不安定です。移動時にもモニターを着け、細心の注意を払いながらストレッチャー(搬送ベッド)でICUへ移ります。ICUに着いてモニターをつなぎ変え、レントゲン写真を撮ったり、検査のための採血を行ったりします。状態は大きく変化するので目が離せません。しばらくはベッドサイドに付いて状況の変化に対処する必要があります。写真や検査の結果を見て、対処すべき問題があればすぐに指示を出さなければなりません。
 状態がやっと落ち着くと、ICU担当の麻酔科医に後を託して、明日の患者さんのデータ収集と診察に出かけることになります。ですので、術前面談が遅くなってしまうこともあります。ご理解をお願いします。

最後にもう一度・・・

私たち麻酔科医は、手術中のあなたをたえず見守っています。
「安全と快適」、それが麻酔科の願いです。

麻酔科医

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