第4回 公開医療講座Q&A集
Q&A 梶原講師「動脈疾患の外科治療」
Q | 血管の検査は、どんなものがありますか?またどのくらいの頻度で行えばよいのでしょうか? |
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A | 下肢の血管の検査法には下肢の血圧測定、ドップラー血流計測、サーモグラフィによる皮膚温測定などがありますが、いずれも病院でしか検査できません。また、動脈閉塞が認められた場合には血管造影による確定診断(動脈がどの部位でどの程度閉塞しているか等を調べる)が必要となります。*血管造影はカテーテル検査、CT検査、MRI検査で行います。 どのくらいの頻度で検査すればいいか、はっきりとした研究は現在のところありません。下肢の血圧測定は他の検診と同じ頻度で行えばよいかと思います。 |
Q | 足の血圧を調べてみれば分かるとのことでしたが、家庭にあるデジタルの簡易式のものでもよいでしょうか? |
A | 家庭用の血圧測定器では下肢の血圧は測定できないと思います。 |
Q | どこで調べてもらえますか? |
A | 測定は病院で行うこととなりますが、開業医さんでも測定できるところが増えています。 |
Q | 人間ドック等の健康診断で判定していますか?どの項目をフォローすればよいですか? |
A | 人間ドックでも最近は調べているところが多くなっています。下肢の血圧という項目があると思います。 |
Q | 血液検査で分かるのですか?コレステロール値との因果関係はありますか? |
A | 血液検査ではわかりません。コレステロールが高い人に閉塞性動脈硬化症は多いのですが、心疾患ほどはっきりとした関係はありません。 |
Q | 血圧の最低/最高はどのくらいに保てばよいのですか? |
A | 血圧は他の疾患と同様、正常の血圧を維持してください。 |
Q | 動脈硬化を客観的に測定する方法はあるのでしょうか? |
A | 現在のところ、客観的な動脈硬化の測定法はありません。 |
Q | 血管の検査に保険はききますか? |
A | 血管の検査は(病名があれば)保険がききます。 |
Q | 検査を希望する場合、どのようにしたら検査が受けられますか? |
A | 症状、所見があれば検査は受けられます。 |
Q | 紹介状等は必要ですか? |
A | 紹介状はなくても当センターは受診できますが、できれば他の医療機関からの紹介状をご持参いただければ幸いです。 |
Q | 病気でなくても検査はしてもらえるのですか? |
A | 原則的には症状、所見がないと保険が使えず、すべて自費になってしまいます。 |
Q | 検査は予約制ですか? |
A | 多くの検査は予約制になります。 |
Q | 人工血管の寿命はどの程度ですか?また人工血管の手術を受けた場合には、長期間の服薬が必要になりますか? |
A | 大口径(太さが10mm以上)の人工血管は現在では、何十年でも寿命があります。ただ、動脈硬化は治していませんので人工血管以外の自分自身の動脈の病気が進行し、閉塞性動脈硬化症が再発してしまう可能性はあります。 |
Q | 人工血管置換後の食事面等での注意点を教えて下さい。 |
A | 人工血管置換術後の食事に関しての注意点は手術していない患者さんの注意点と同じで、日常の心がけが大切です。 |
Q | 血管の老化を予防するために、食事面、運動面等で具体的な注意点を教えて下さい。 |
A | 生活改善(特に禁煙)、運動療法が予防となります。詳しくは公開講座当日の配布資料をご参照下さい。 |
Q | コレステロールを除去あるいは溶解できないのでしょうか? |
A | 動脈壁に溜まったコレステロールを除去又は溶解する薬、或いは方法はありません。動脈壁に溜まったコレステロールを除去又は溶解する薬、すなわち抗動脈硬化薬ができたら、これは不老長寿の薬となります。人類の夢です。抗癌剤はありますが、抗動脈硬化剤はまだありません。 |
Q | 血管を若返らせる方法、若しくは老化を防ぐ方法を教えて下さい。 |
A | (2)のとおり、老化を予防できる薬ができたら"不老"の薬になりますが、現在ではありません。 |
Q | 運動不足、寝不足が血管に悪影響を与えるのでしょうか? |
A | 運動不足は血管に悪影響を与えます。寝不足は、これによって血圧が上昇すれば血管に悪影響を与えます。 |
Q | 静脈瘤についても簡単に説明をお願いします。動脈瘤との違いは何ですか? |
A | 下肢静脈瘤は下肢の表在静脈(脚の皮膚の下にある静脈)の弁がこわれた病気で、動脈瘤と全く違います。今回は動脈についてお話しましたが、静脈のことはいずれ別の機会にお話したいと思います。 |
Q&A 大西講師「肺がんと放射線のはなし」
Q | 肺がんの症状を教えて下さい。 ― 自覚症状が出てからでは手遅れですか? |
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A | 一般的には、肺癌がある程度大きくなるまで、症状が出ません。 ただ、早期の肺癌でも症状があることがあります。たとえば、気管支の表面に癌がある場合、血痰がでることがあります。 また、癌自体は小さくでも、気管支を閉塞して、肺炎を引き起こし、発熱、咳、痰などの症状がでることがあります。こうした症状がでた場合には検査することをお勧めします。 このほか、症状がなくても現在喫煙している、あるいは以前喫煙していた方は、肺癌になるリスクが高いので、早期に肺癌を発見するために検診を受けることを お勧めします。肺癌も、他の部位の癌と同様に、早期に発見すれば治る可能性が高くなるからです。 |
Q | 私は喫煙者なのですが、肺気腫といわれています。肺がんになりやすいでしょうか? ― COPDは肺がんに移行するのでしょうか? |
A | 肺気腫やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)は慢性的な肺の病気です。詳しくは、呼吸器内科の慢性閉塞性肺疾患の項目をごらんください。 肺気腫やCOPDの最大の危険因子は喫煙です。COPDの方が全て肺癌になるわけではないのですが、たばこは肺癌の危険因子でもあるので、喫煙者の方は COPDにもなりやすいし、肺癌にもなりやすいということがいえます。さらに最近の研究ではCOPDの慢性的な炎症自体が、肺癌の危険因子になりうるという説も出ています。 COPDは、早期には自覚症状に乏しいのですが、放置すれば、呼吸が苦しくなり、段々と日常生活も困難となり、ついには常に酸素を吸入していないと生活できない状態となります。治療としては、喫煙者の方ではまず禁煙が第1です。気道の炎症をおさえて、呼吸を楽にするための薬物療法、呼吸のリハビリテーションなども行われます。階段、坂道などで息切れするようになっても、年のせいかなと思って放置しがちで、かなり進行するまで、病院を受診しない方がありますが、喫煙者の方で、咳、痰がでる、最近息が切れやすいといった症状のある方は一度受診、治療をお勧めします。 |
Q | MRIは、身体に副作用はないのでしょうか? ― MRI検査では閉所・高騒音があると聞きますが本当でしょうか? |
A | MRIは強力な磁石とラジオの電波を用いて体の内部を画像としてみる装置です。みかけはCTとよく似ていますが、CTと異なり、放射線は使用しないので、被ばくはありません。ただ、体がすっぽり、磁石の中にはいるので、閉所恐怖症の方は検査できない場合があります。音がうるさいのですが、ヘッドホンや耳栓などで、防げる程度です。 MRIは現在までのところ人体への悪影響は知られていません。ただし、以下のように、体内に何らかの金属が埋め込まれている方は、MRI 検査が体内の金属に影響することがありますので、検査の際に医師、または担当の技師にご相談ください。 1 ペースメーカーが埋め込まれている方は強力な磁石の作用によりペースメーカーが壊れることがあるので、MRIを検査することができません。 2 磁石式入れ歯は、入れ歯の磁石が弱くなることがあります。 3 脳動脈瘤の手術をした方は、動脈瘤を止めたクリップがとぶことがあるので検査できない場合があります。(MRI対応のクリップを使用している場合には検査可能です。) |
Q | PETという検査をよく耳にしますが、どういう検査なのでしょうか?有効性・将来性について教えて下さい。 PETとCTで5mm以上の結線腫と診断され、現在経過観察中ですが、がん以外でもPETで陽性にでることはあるのでしょうか? |
A | PETとはPositron Emission Tomography(ポジトロン放射断層撮像法)の略です。最近保険が適応となり、広く行われるようになりました。 もっとも一般的に行われているのは、18F-FDGを注射して行うFDG-PETです。18F-FDGはブドウ糖によく似た構造の物質で、ブドウ糖の代謝が盛んな細胞に多く取り込まれ、かつブドウ糖のようには分解されず、そこにとどまって微弱な放射線を放出する性質を持っています。癌は分裂増殖が盛んで、正常組織より多くのブドウ糖を取り込む性質があるため、18F-FDGも正常組織より癌に多く取り込まれます。全身に18F-FDGが行き渡った頃に特殊な検出器で撮像すると、18F-FDGの多く取り込まれた組織は黒く描出されます。したがって、FDG-PETにより癌を検出できるのです。 検査は18F-FDGを注射して1時間位してから写真を撮ります。撮影時間は30分間ほどで、寝ているだけです。 一般的に、FDG-PETで検出できる癌の大きさは1cm以上とされています。ただし、18F-FDGが取り込まれにくい癌もあり、すべての癌が必ず検出できるわけではありません。逆に肺の場合には、結核や肺炎などにも18F-FDGが取り込まれる場合があり、PETで陽性だったから必ず癌というわけではありません。PETは非常に有効な検査ですが、万能ではないのです。 残念ながら、当センターにはPETはありません。横浜市では、金沢区福浦の横浜市大附属病院、新横浜のゆうあいクリニック、横浜市立脳血管センターで検査が可能です。新横浜のゆうあいクリニックではPET検診も行っており、一般の方でも申し込めます。 |
Q | ヘリカルCTと通常のCTの違い(メリット・デメリット)を教えて下さい。 |
A | CT(Computed tomography)とは身体の周りぐるり180度から放射線をあてて、からだを通り抜けた放射線を解析し、身体の輪切りの画像を撮影する装置です。 最も初期のCTではX線を出す管球が身体の周りを回るだけでしたが、ヘリカルCTでは管球が回るのと同時にテーブルが移動するので、結果としてらせん状に撮影することになります(ヘリカルとは螺旋という意味。ヘリコプターのヘリです)。さらにマルチスライスCT(マルチデテクターCTともいう)になると、ヘリカルCTのように管球がらせん状に動きつつ検出器が複数列になっていますので、一度に広範囲の撮像が可能となりました(下図)。 基本的には新しいCTほど検査の時間が短縮され、検査の精度が向上し、さらにさまざまな技術革新により放射線の被ばくも低減しています。初期のCTでは肺を撮像するのに約30回息を吸って止めることを繰り返す必要がありましたが、ヘリカルCTではそれが5回程度となり、マルチスライスCTでは5-10秒間程度の1回の呼吸停止で、肺全体が撮像できるようになっています。 マルチスライスCTが開発され、心臓のように常に動いていて止めることが困難な臓器でもCTで手軽に検査できるようになりました。現在の医療にはマルチスライスCTは欠かせないものとなっています。 |