第13回 公開医療講座Q&A集
「心臓弁膜症って何?~弁を「直す」と「換える」の進歩」 塩野講師Q&A集
Q | 弁膜症の症状4つありましたが、貧血のときに息切れ・ドキドキがあります。放って おくと弁膜症を発症することがありますか? |
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A | 講演でお話しした症状(駅などの階段で息切れがする、心臓がドキドキする、脈が乱れる、むくみがひどい)は弁膜症の代表的な症状のみです。そのほかの病気でもドキドキや、息切れは起こります。貧血でもドキドキすることがありますが、貧血だけでは弁膜症にはなりません。 |
Q | 配布資料の経過図において、僧帽弁疾患の症状の始まりから5~10年で心不全となっていますが、この期間をできるだけ伸ばす方法はありますか? |
A | ・塩分、水分のコントロール ・治療が始まっていればきちんと内服治療 ・体重を増やさない 普段の生活で注意することはこのようなことだと思います。 |
Q | 配布資料に弁膜症の原因となる病気例がありましたが、原因が分かりません。もしかしたら母親の胎内(先天性)ですでにあったのではないかと言われました。このようなことはあるのでしょうか? |
A | 先天性の弁膜症もあります。遺伝的な素因があることもあります。 しかしながら、病気の原因がすべて解明されているわけではないので、不明のこともたくさんあります。 |
Q | ダウン症の子供(36歳)が最近、起坐呼吸の状況をよく見られるのですが、本人が意思表示をしてくれないので、苦しいのか、眠れないのか、理解できません。弁膜症の診察を受ける必要がありますか?また、このような障害者でも受診可能でしょうか? |
A | ダウン症に合併しやすい心臓病があります。たとえばファロー四徴症、心室中隔欠損などが有名です。心臓検査をお勧めします。先天性心疾患の得意な病院や小児科のある病院がお勧めです。 |
Q | 弁形成術、生体弁置換術の入院期間や回復する期間に差はありますか?どれくらいですか? |
A | 形成術、弁置換術で入院期間に差はありません。術後問題なければ3週間程度で退院されています。 |
Q | 腱索の断裂で人工腱索を使った形成術があるそうですが、乳頭筋断裂では置換術しかないのですか? 新しい治療法で血管から人工の弁を入れるとありましたが、あの人工弁はどのように定位置に固定されるのですか?また、そのとき元の弁はどうなってしまうのですか? |
A | 乳頭筋の断裂の場合、逆流の範囲が広範になるため弁置換になることが多いと思います。 未来の弁の治療でお話しした弁は、ステントの部分に尖った突起がありそれが血管の内膜に食い込んで固定されます。場所は本来の弁の位置ですが、冠動脈があるため極めて限られた位置で、位置決めが難しいと思います。もとあった弁はバリバリとつぶされてしまうこととなります。 |
Q | 私自身、平成19年4月に弁置換の手術をしました。講演では成績も良くなっているとのことですが、弁置換の寿命が気になります。仲間は2度やっています。 |
A | 弁が機械弁か、生体弁かによっても異なります。生体弁の場合耐久性は15年ぐらいといわれています。機械弁の場合耐久性は十分あると考えます。血栓やバイ菌による感染が起こった場合は再手術が必要となることがあります。 |
Q | 人工弁が入っているとMRIは撮れませんか? |
A | 最近の人工弁は問題ありません。 |
Q | 手術の金額の違い、手術法、時間等を教えてください。 |
A | 心臓手術は300~400万円かかります。保険適応ですのでその1割あるいは3割負担となります。 人工心肺という装置を使って、心臓を止めその間に弁を取り替えます。通常5~6時間程度かかります。 |
Q | 大動脈弁閉鎖不全症にて経過観察中の者です。 (1)弁置換術を受けるタイミングについて、いつ、どのような場合か、具体的にお教えください。 (2)上記タイミングを誤った場合に想定されるリスクをお教えください。 |
A | 心臓超音波検査でEF50%以下、左室収縮期径55mmを超えてきたら手術したほうがよいでしょう。タイミングを逃した場合、心不全となり心機能が一段と低下します。 |
Q | 僧帽弁狭窄症と言われて5年になります。日常生活、何不自由なく送っています。弁開口部面積は0.9~1.3平方cmくらいです。よく本に手術のタイミングを逃さないようにとありますが、手術のタイミングはどういうときですか? |
A | 弁口面積では1.5平方cm以下は手術の適応範疇に入ってきます。外科医の立場から言えば、心不全を発症する前に外科治療したほうが、心機能を良好に温存できます。 |
Q | 心臓弁膜症・僧帽弁閉鎖不全症で30年近くになります。最近自覚症状が出て、今年9月に手術を前提にカテーテル検査をしましたが、逆流がひどいが心臓の動きは思ったよりは良く、もう少し時期を待ってもよいとの診断でした。 手術の時期は本人の自覚症状だけでは決められないのでしょうか? やはり医師の方の診断、手術時期の基準などがあるのですか? 早く手術をして楽になりたいとつい思ってしまいます。 |
A | 手術した時点での心機能を温存することになるので、あまり心機能が低下しない時期での手術のほうがよいと思います。弁膜症の症状は徐々に来るので判断が難しいとは思います。 |
Q | 男の孫5歳、先天性僧帽弁の弁膜症(閉鎖不全、逆流あり)。弁置換術を待っている状態ですが、元気で暮らしています。お薬は朝夕服用。手術後どれくらいの生活ができるのかとても不安でいます。例えば小学校の体育はできるのでしょうか? |
A | 弁置換術後、日常生活を問題なく過ごしている方はたくさんいます。重要なのは心機能が維持されているかどうかです。弁置換術後はワーファリンの内服が必要になるためけがをしやすい職業は支障があります。 また、心機能がよければ体育を受けることも可能です。状況にもよりますので担当の先生とよくご相談ください。 |
Q | 大動脈弁閉鎖不全で弁の片側が硬くなっている症状です。私(53歳)は先天性の左心不全症で現在ラシックス錠20mg、ニューロタン錠25を朝食後、飲んでいますが、仕事で頭を使ったり体を動かしたりすると、午前中10回くらい利尿作用があり(午前中は事務所内の仕事をしています)、休日など横になっていると2~3回くらいです。休日の午前中、旅行や運動の際、こわくて飲んでいません。 薬を弱いのに変えるか、中止にする方法はないのでしょうか? |
A | 水分の制限を厳重にして薬を変更する可能性はあると思いますが、病状にもよりますので担当の先生とよくご相談いただくのがよいかと思います。しかしながら、心不全を起こしてしまっては、意味がありませんので心臓を大事に考えるべきと思います。 |
Q | 僧帽弁で逆流する(軽い)ので利尿剤を医師からもらっていました。 でもトイレが近くて量もたくさんですが、これでは外出がトイレばかり行きますので、飲むのをやめています(勝手に)。困っています。 別の内科医は、血圧を下げる薬と、コレステロールを下げる薬をくださるのですが、血圧は100~110前後なのでこれもやめました。どうすべきですか? |
A | 医師としては、薬を勝手にやめてしまう患者様は困ります。最近は医者に対する信頼が問題視されていますが、医者の立場から患者様を信頼できない場合、これも治療は成り立ちません。お互いの信頼関係があってこそ治療行為が成立するのではないでしょうか。 失礼なことを申し上げてしまったかもしれません。お気に触りましたらお許しください。 |
Q | ワーファリン現在1日1錠ですが飲んでおります。副作用は何かありますか?ビタミンKを含むものは食べないことと言われていますが、知らずに食べた場合はどうなりますか? |
A | ワーファリンを内服していると出血しやすくなります。ビタミンKを取るとワーファリンの利き具合が悪くなります。その状態が続くと人工弁に血栓ができる場合があります。 |
Q | 僧帽弁閉鎖不全症で3年前に弁形成をしました。 (1)三尖弁の閉鎖不全があると言われていますが、あまり心配はないのでしょうか?将来は? (2)現在、血圧は90~100位と低いのですが、その場合でも減塩の必要(6g)があるのでしょうか? |
A | 三尖弁の閉鎖不全症でも進行すれば右心不全、四肢のむくみや腹水を生じる場合があります。 塩分は余分な水分を体内に貯留することになるので、血圧が低くても制限したほうがよいと思います。 |
Q | 機械弁を入れて13年たちますが、ビリルビンの単位が高く出ます。溶血について教えてください。 |
A | 機械弁の場合多少溶血する場合があります。LDHが少し高いこともあります。赤血球の膜を安定化させる目的で、ビタミンCの投与が効果的な場合もあります。 |
Q | 「塩分は一日に6g以下に控えましょう」というお話の中で、余分な水分が心臓に負担をかけるということでしたが、水そのものは、健康な成人で1日2リットル位とると良いと言われているのは正しいのでしょうか? |
A | 健康で心臓に問題のない人はそのぐらい取ってもよいでしょう。 |
Q | 配布資料の「心不全の増悪因子」の中で、「飲水塩分摂取過多」とありますが、夏季などの暑い時期における水分摂取について、どのように調整すればよいでしょうか? |
A | 術後の患者様には夏でも水分制限していただいております。体重の増減が目安となります。 |
「あなたを狙う呼吸器感染症~新型インフルエンザ、結核」萩原講師Q&A集
Q | 小児は10日間くらい感染可能期間があると説明されていますが、成人より長いのはどうしてですか? |
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A | 小児はインフルエンザに対する免疫がないので、ウイルスの増殖が早く、駆逐も遅いためではないかと思います。 |
Q | 新型インフルエンザにかかってしまったら、予防接種は受けなくてもいいのですか? |
A | かかったインフルエンザが新型かどうかの確証はできませんが、現在(講演時)インフルエンザにかかった場合はほとんどが新型なので、予防接種は受けなくてもよろしいかと思います。 |
Q | 基礎疾患のある人は優先順位が高いと言われていますが、弁膜症(手術済み)の場合はいかがでしょうか? |
A | 弁膜症のみでは優先対象とはならず、症状に応じて優先となるかどうかが決まります。担当医とご相談ください。 |
Q | インフルエンザウイルスは重くて飛ばない=床に落ちるということになると思いますが、床に落ちて水分が蒸発した状態になってしまったインフルエンザウイルスは感染能力がないと考えてよいでしょうか? |
A | お考えのとおりでよいと思います。 |
Q | マスクをよく鼻穴を出して口だけ覆っている人がいますが、効果はどうなのでしょう? |
A | 鼻も覆わなければ効果半減(以下)です。 |
Q | インフルエンザの合併症の中で「その他の合併症」(特に心筋炎)を防ぐ方法(合併症にかからないようにする方法、普段気をつけるべき点)はありますか? |
A | 講演でも述べたように、睡眠・休養、バランスのとれた食事、規則正しい生活、などふだんの免疫力を高める生活が大事です。 |
Q | インフルエンザAと診断されたら仕事や復帰はいつごろからになるでしょうか? |
A | 症状が出てから7日間は人に移す可能性が残るので、できればそれくらい休みをとるのが望ましいです。 |
Q | 重症化した場合の処置として医療機関ではどのような治療をするのですか?後遺症が残らないような対策はできないのでしょうか? |
A | 肺炎や脳症を起こした場合、もちろん後遺症が残らないように万全の医療を行いますが、ある一定の少ない確率で死亡したり後遺症が残ったりする場合はどうしてもあります。治すのは医療だけでは難しく、本人の免疫力や体力によるところが大きいからです。 |
Q | 抗生物質が処方されますが、インフルエンザのときもかぜのときもウイルスに効かないはずだと思い、飲んでいません。これでよいでしょうか? |
A | 基本的には正しい考え方ですが、高齢者ではインフルエンザやかぜをきっかけに細菌性肺炎になることがあるので、その予防にはなっていると思います。その他に、細菌性扁桃炎などの疑われる場合も抗生物質が有効です。 |
Q | BCGを済ませれば結核は問題ないのでしょうか? |
A | 必ずしもそうとは言い切れません。もし咳が続く等の症状があるなら、まず胸部X線写真を撮ってもらってください。 症状がない場合は、定期的な健診をお勧めします。 |
Q | 結核について、小学生のときツベルクリン陽性でした。今70歳ですが、大丈夫ですか? |
A | 大丈夫とは言い切れません。毎年健診を受けてください。 |
Q | 老人に結核が増えていると聞くので、一度レントゲン検査をした方がよいと思いますか? 能見台へ行って検査した方がよいのでしょうか?かかりつけ医にレントゲンを撮ってもらっても分かりますか? |
A | 当院では健診はやっていないので、基本的にはかかりつけで診てもらい(X線はどこの医療機関でもきちんと診てもらえますから大丈夫です)、もしも異常があったら当院にいらしてください。 |
Q | 結核と抗酸菌症の違いは何ですか? |
A | 結核も抗酸菌症(非結核性抗酸菌症のことをおっしゃっているのだと思います)も両方とも「抗酸菌」によるものです。非結核性抗酸菌症は、結核と同じ「抗酸菌」という分類の菌ですが、人から人へうつることはありません。他にもいくつか違いがありますがこれが最も大きな違いでしょう。 |