
自然気胸
自然気胸とは、肺表面から空気が漏れ、胸腔内に逃げ場のない空気が溜まり、肺が縮む病気です。症状は胸痛や呼吸困難で、たいていの場合、病院でレントゲン写真を撮って初めて診断がつきます。放置すると肺の機能を大きく損なうばかりか、場合によっては生命の危険もある病気です。
原因は肺の表面にブラとかブレブと言われる風船のようなものができて、そこが裂けて空気が漏れる場合がほとんどです。このようなものがなぜ出来るかは正確には分かっていません。
また、なぜか痩せていて胸の薄い若い男子が多いのが特徴ですが、高齢者の肺気腫患者にも多い疾患です。女性も決してならないわけではありません。
治療は、軽い場合は注射器で空気を抜いたり、皮膚を少し切って管を胸の中に入れて、簡単な機械を使って持続的に空気を抜いていれば、半分ぐらいの人は空気の漏れが止まり治ります。残りの半分の人は、漏れが止まらないか、止まってもいずれ再発してしまいます。このような方は手術が必要だと考えています。
手術
手術はブラとかブレブと言われる肺の表面にできた風船のような部分をそっくり切り取って縫い合わせるのですが、以前の開胸手術は腋の下を10cm以上も切って、肋骨と肋骨の間を万力の逆さまのような道具を使って拡げて手術していました。当然、手術後も結構きつい痛みが続くわけです。
今では、これも胸腔鏡を使って5mm~1cmぐらいの傷3ヶ所ほどで、肋骨と肋骨の間を拡げずに手術を行いますので、痛みが軽くなり傷跡も小さくなりました。若い人なら術後は2~5日ほどで退院可能です。
しかし、残念ながら胸腔鏡手術も良いところばかりではありません。胸腔鏡を用いた自然気胸の手術は、従来の開胸の手術に較べて再発が多いと言われています(2~5倍)。原因はまだはっきり分かっていませんが、私たちは胸腔鏡の長所を生かすために、再発を予防する独自の工夫を試みて成果を挙げ、開胸の場合と同等の成績を実現しています。
2010年より、新しい試みとして若年者の気胸に対する手術に直径3㎜のスコープを使用した「1 port+2 punctures法」を開始しました。この方法の適応は、現在のところ癒着やブラの比較的少ない症例に限定しています。手術の傷は1cm程度の傷が1ヵ所と3mm程度の傷が2カ所だけで、外見的に優れているだけでなく、手術後の痛みが少ないのが特長です。従来、多用された硬膜外麻酔を行なわなくても肋間神経ブロックだけでもほとんどの場合対応出来ます。術後、手術の傷はほとんど目立たなくなります。3mmの傷はほとんど消失し、1cmの傷がわずかに残ります。
まだ開始したばかりで術後の気胸再発のデータはありませんが、従来法と同じように肺切除部の被覆法も行なっているので、再発率は従来法と同程度と推定しております。
現在では、高齢者の肺気腫をベースにした難治性気胸でも、全身麻酔が可能であれば、胸腔鏡下手術で対応します。今後もより良い手術を目指してさまざまな工夫を検討していく所存です。
診療実績は、呼吸器外科をご覧ください。