非結核性抗酸菌症
肺非結核性抗酸菌症とは?
非結核性抗酸菌は、土や水などの環境にどこにでもいる菌です。結核菌と同じ抗酸菌というグループの菌ですが、結核との大きな違いが二つあります。一つは、人から人には感染しないということ、もう一つは、進行がゆっくりであるということです。
近年ものすごい勢いで増えている疾患で、特に基礎疾患のない痩せ気味の中年以降の女性に多いのが特徴です。肺非結核性抗酸菌症の中の大半を占めるのは肺MAC症です。
症状
咳・痰などのいわゆる呼吸器症状が主な症状ですが、症状が出る前に健診の胸部写真の異常陰影で発見される人が増えています。最近診断される人のうち、半数近くが無症状です。
診断
胸部X線写真で本疾患を疑うような陰影がある場合には、喀痰検査を複数回施行します。異なる日の喀痰から2回以上培養されたら確定診断となります。喀痰が出ない場合には、食塩水による誘発喀痰を行います。
採血検査で抗MAC抗体を測定することも診断の一助となります。
治療
肺MAC症の場合、3種類の薬(5~10錠)を毎日飲み続けます。喀痰から菌が3回続けて培養されなくなってからさらに1年半程度の治療継続が推奨されていますので、治療は短くても約2年に及びます。この治療で菌が陰性化しない場合は、注射や吸入薬による治療強化が必要になります。当院では最新のガイドラインに基づいて治療を行っており、新しい薬の治験にも随時参加しています。
経過
治療をすれば必ず治癒するわけではなく、3割ほどの方は治療をしても菌が陰性化しない(=治癒しない)とされています。また、非結核性抗酸菌症は進行がゆっくりであること、また進行しない場合もあることなどから、病状によっては治療をすぐに始めずに慎重に経過観察する選択肢もあります。しかし、年齢が若いほど、また病気が初期であるほど治癒しやすいこともわかっていますので、治療を始めるなら早いほどよい、ということもできます。治療で治癒した場合でも、残念ながら3割ほどの方は再発または再感染します。
日常生活の注意
痩せ型の人に多く、また体重が減ると悪化することがわかっています。体重を減らさないよう、少しでも増やすよう、栄養に注意して食事をしっかりとりましょう。十分な睡眠や適度な運動も大事です。薬だけでは治癒しにくい病気なので、自分の免疫力つまり余力を上げるような生活が大事です。