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気胸センター

気胸センター

概要

当センターは、専門病院の特徴を生かし、呼吸器外科・呼吸器内科との密接な連携により診療を行いながら、患者さんに最適な治療を実施できる体制が整っております。この度、気胸に関しても、内科と外科がダイレクトにつながりながら、より質の高い治療を提供できるように、気胸センターを開設いたしました。
気胸の患者さんの不安を一日でも早く取り除き、侵襲が小さくQOL(生活の質)に配慮した治療を行い、患者さんの早期の社会復帰をめざしていきます。

気胸センターの特徴

気胸とは

気胸は、肺から空気が漏れ、胸の中に逃げ場のない空気が溜まり、肺が縮む病気です。
症状は胸痛や呼吸困難で、たいていの場合、レントゲン写真を撮って肺が縮んでいるのが確認され、初めて診断がつきます。放置すると肺の機能を大きく損なうだけでなく、場合によっては生命の危険もある病気です。
原因は、肺の表面にブラとかブレブと言われる風船のようなものができて、そこが裂けて空気が漏れる場合がほとんどです。このようなものが出来る原因は、正確には分かっていませんが、痩せていて胸の薄い若い男子が多いという特徴や、高齢の肺気腫患者にも多いことから、成長期の肺の変化や肺気腫にともなう肺の破壊が関与していることが推測されています。また、少ないながらも女性もけっして気胸を発症しないわけではありません。

気胸の治療

治療は、肺の縮みが軽い場合は、安静にして様子を見たり、注射器で空気を抜いたりしますが、縮みがひどい場合は、ドレナージと言って、皮膚を少し切ってチューブを胸の中に入れて、簡単な機械を使って持続的に空気を抜きます。約半数の患者さんはドレナージだけで空気の漏れが止まり治ります。残りの半数の人は、漏れが止まらないか、止まってもいずれ再発してしまいます。このような方は手術が必要だと考えています。

手術

手術はブラとかブレブと言われる肺の表面にできた風船のような部分をそっくり切り取って縫い合わせるのですが、以前の開胸手術では、腋の下を10cm以上も切って、肋骨と肋骨の間を万力の逆さまのような道具を使って拡げて手術していました。当然、手術後も痛みが続いていました。
今では、胸腔鏡を使って3mm~1cmぐらいの傷3ケ所ほどだけで、肋骨と肋骨の間を拡げずに手術を行いますので、痛みが軽くなり傷跡も小さくなりました。若い人なら術後は2~5日ほどで退院可能です。

しかし、残念ながら胸腔鏡手術も良いところばかりではありません。胸腔鏡を用いた気胸の手術は、従来の開胸の手術に較べて再発が多いと言われています(2~5倍)。
原因はまだはっきり分かっていませんが、私たちは胸腔鏡の長所を生かすために、再発を予防する独自の工夫を試みて成果を挙げ、開胸の場合と同等の成績を実現しています(後述)。
高齢者の肺気腫をベースにした難治性気胸でも、全身麻酔が可能であれば、通常の胸腔鏡下手術を行ないます。呼吸状態が悪く全身麻酔が出来ない場合は、局所麻酔下の胸腔鏡下手術や、癒着療法や気管支塞栓療法も検討しています。

治療実積
手術件数

当センターでは、待機手術だけでなく、地域の先生方のご協力により、24時間対応しているホットラインを通じて、たくさんの患者さんをご紹介いただき、神奈川県下でもトップクラスの手術数となりました。気胸に対する胸腔鏡下手術は低侵襲で多くのメリットが有り、今ではほとんどの病院で行われておりますが、当センターでは3~5mmのスコープを用いて、より小さい傷で、より痛みの少ない、しかも安全で確実な手術を目指しています。

再発率

気胸に対する胸腔鏡下手術の最大の問題点は、開胸下の手術に較べて気胸の再発率が高いことです。
一般に開胸術の再発率は0.5~3%と言われ、当施設の集計でも3.13%です。これに対し胸腔鏡で切除しただけの再発率は5~15%と言われ、当施設の集計では10.6%にのぼります。
特に若い方の場合、再発率が高いと言われます。原因は、切除したところのそばに新しいブラが発生し、それが破けてしまうためです。なぜそうなるかは詳しくは不明です。痩せた若い男性が多いため、縦方向に急速に成長するため、肺の表面に弱いところが出来てしまうためだと言う説もありますが、証明することはなかなか難しいでしょう。

ともかく、再発率低下の試みとして、気胸の原因となるブラやブレブと言う肺の表面に風船の様に膨らんだ胸膜を切除した部位に、体内で吸収される材質のシートを貼り付けて、新しく出来ないように肺の表面を補強しています。接着を良くするために生体糊を使用することもあります。その結果、再発率は2.5%に低下しました。

合併症

若い方の場合、気胸に対する胸腔鏡下手術で発生した、何らかの処置を必要とした合併症は非常に少なく、まれに、術後に肺からの空気の漏れが続くことがあるくらいです。
漏れが続く時は癒着療法を行います。高齢の方は、もともと低呼吸機能、肺気腫等の危険因子を持っていた方が多く、呼吸不全や肺炎等の合併症が時々見られます。当センターはこのような疾患を抱えた方が多いため、高齢の方の割合が高い傾向にありますが、その割には合併症の発生は少ないと自負しております。

若年者の気胸に対する手術

2010年より、新しい試みとして、若年者の気胸に対する手術に、直径3mmのスコープと鉗子を使用した「1port+2punctures法」を開始しました。最初は、癒着やブラの比較的少ない患者さんに限定していましたが、現在では、殆どの若い方と女性に行なっています。
高齢の方は癒着がひどい場合が多いので、従来通り直径5mmのスコープで行なっています。
この手術の傷は1cm程度の傷が1カ所と3mm程度の傷が2カ所だけで、外見的に優れているだけでなく、手術後の痛みが少ないのが特長です。従来、多用された硬膜外麻酔を行わなくても肋間神経ブロックだけでもほとんどの場合対応出来ます。術後、手術の傷はほとんど目立たなくなります。3mmの傷はほとんど消失し、1cmの傷がわずかに残ります。
従来法と同じように肺切除部の被覆法も行っているので、気胸の再発率は従来法と同程度です。今後もよりよい手術を目指してさまざまな工夫を検討していきます。

受診について

患者様へ

かかりつけの先生より気胸と診断された患者様は、担当の先生から紹介状を書いてもらい、持参して呼吸器外科または呼吸器内科を受診して下さい。診療時間外であっても、かかりつけの先生から気胸センターに連絡していただければ、24時間スムーズに呼吸器外科または呼吸器内科の医師が対応します。
治療方針については両診療科間で相談のうえ、協力して治療に当たります。

医療機関の方へ

従来通り呼吸器外科外来(水曜日)または呼吸器内科(月曜日・金曜日)の外来で対応させていただきます。
また、気胸の緊急処置が必要な患者様の場合は、ご一報いただければ即時対応させていただきます。
医療機関の皆様向けにはホットラインを開設しております。詳細は当センター地域連携室より御連絡させていただいておりますが、いまだ御案内が届いていない等ございましたら、お気軽に「地域連携室」まで御連絡ください。